Tu&Aki’s Couple Life

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ペロシ議長の台湾訪問

先日、アメリカ下院の議長であるペロシ氏が台湾を訪問しました。

 

ペロシ議長は声明で、以下を発表し、今回の台湾訪問の意味を説明しました。
(1)安全保障に関して、脅威に直面する台湾が自由を守るのを支援するという米国議会の継続的なコミットメントを再確認
(2)経済に関して、米国議会が7月末に可決した「CHIPSおよび科学法案」がいかに両国・地域の経済強化に大きな役割を果たすかを伝えるとともに、6月に立ち上がった新たな通商枠組み「21世紀の貿易に関する米国・台湾イニシアチブ」への支持を表明、(3)ガバナンスに関して、台湾の新型コロナウイルス対策を称賛するとともに、気候危機を含む優先課題における協力の継続を確認した。

www.jetro.go.jp

 

その後、ペロシ議長の訪台に怒った中国は、台湾周辺を包囲するかのような大規模な軍事演習を行いました。

 

www.nikkei.com

 

台湾をぐるっと囲んだ演習でした。演習には東側の海域も含まれ、日本領土である宮古島西表島から100kmも離れていません。事実、演習時には、中国の無人機が沖縄本島宮古島の間を公然と飛行したそうです。

演習は、ペロシ議長を受け入れた台湾に対する中国の恫喝を目的としたもので、8月10日に終了しました。ペロシは台湾訪問後、韓国を訪れたのですが、ユン大統領は会談を行いませんでした。韓国訪問後は、日本を訪れ、岸田首相と面談しました。

 

要するに、ペロシ下院議長は、アメリカ議会の代表(政府ではなく)として電撃的に台湾を訪問し、中国から台湾を守る、という意思を表明したわけです。

中国としては、『一つの中国の原則』に基づき中華民国(台湾)の存在は認めておらず、台湾が独立国家として振舞うこと(外交すること)を排除しようとしています。したがって、アメリカのペロシ議長の訪台とその台湾応援の姿勢は中国にとって苦々しく、許せないわけです。

中国の主張は、この『一つの中国の原則』の下、台湾を支配していないにもかかわらず(中華民国、台湾政府が統治している)、台湾は「中国」領土の一部であり、その全体が「中国」という主権国家であるとしています。さらに中国内戦を経て、中華人民共和国(中国)は自国政府が「中国」の政府として中華民国を継承したもので、台湾を拠点とする現在の中華民国政府は違法政権であって、取って代わられるべきであるという主張を繰り返しています。

 

しかしながら、今の中国の思考、行動を見ると、その主張は単に『中国の膨張』の発露でしかないように思えます。

 

台湾は元はと言えば、日清戦争で、清(当時)が日本に敗れ、1895年に清から日本に割譲されたものです。その後の太平洋戦争での日本の敗戦、さらに中国本土での国共内戦(国民党と共産党との間での戦争)の結果、敗れた国民党が台湾に逃れ、政権を打ち立て、”国”が成立しました。その国民党は、当初は独裁政治を行っていたのですが、1989年ころには民主化され、以降は、国民党のほかに民主進歩党などが政権を担うようになったのです(現総統の蔡英文民主進歩党)。台湾が中国から離れて、実に130年余り、それだけの歴史がすでに台湾にあって、国として成立していながら、これを今なお併合しようとする中国は『覇』を唱えているにすぎない、と思います。

 

仮に中国が台湾を軍事的に吸収できたとしても、その膨張は留まることはなく、おそらく、次のターゲットとして、尖閣諸島を含めた沖縄に向かうのではないかと思います。沖縄は、かつての『琉球王国』であり、1872年の琉球処分により、当時の清への朝貢を辞めて、日本領となった経緯があります。したがって、これも『一つの中国の原則』となりうる可能性があるわけです。中国やアメリカの台湾を巡る駆け引きは、直接日本に関わってくるものなのです。

 

日本の岸田首相は、ペロシ議長と会談しましたが、お隣の韓国のユン大統領は直接面談せず冷たくあしらいました。これは、中国から、よくやったと評価されたそうです。韓国にしてみれば、日本とは異なり、台湾問題は対岸の火事にすぎず、これに関わって中国の機嫌を損ねたくない、というわけです。

韓国・朝鮮は中国と国境を接しており、かつての李氏朝鮮の時代(1392年~1910年)には当時の中国の明・清朝朝貢を行ってきました。また、長い歴史の中で中国による直接支配を受けた時代もありました(漢、唐、元朝などによる)。このきわどい関係性からすれば、火の粉が自分に降りかかる可能性もあり、うっかり動けない、ということです。

※現在の北朝鮮の一部である楽浪郡(らくろうぐん)は、漢朝によって設置され、紀元前108年から西暦313年まで存在した朝鮮半島における中国の植民地もしくは領土とされており、これをネタに『一つの中国の原則』のターゲットになりかねない。

 

日本は、その長い歴史の中で、わずかな例外(遣唐使室町時代勘合貿易)はあるものの中国への朝貢は行ってきませんでした。その歴史的経緯からしても、日本が中国に屈することはありえず、アメリカとともに台湾を守ることは、必然であり、岸田首相がペロシ議長と会談したことは極めて適切だったと思います。

 

ペロシ議長の台湾訪問(終わり)