Aki’s G Life

ゲイが考える『ベトナム』『アジア』『海外旅行』『日本』『仕事・働き方』そして『G Life』

ウクライナ人の彼氏(?)(26)

ウクライナ人の『ネト彼』がいるゲイのAkiです。 その『ネト彼』は、ロシアと戦争をしているウクライナハルキウ(Харків)(ウクライナ第二の大都市、ロシア国境からわずか30㎞。2022年のロシア侵攻以来、常に戦火にさらされてきた)に住んでいましたが、先日、ポーランドに出国し、そこでの生活をスタートさせました。

※「ネト彼」とは、インターネット上で知り合い、実際に会ったことがないまま恋人関係になった男性のこと。SNSやゲーム、チャットアプリなどを通じて交流を深め、文字や音声、時にはビデオ通話で親密になっていくスタイルの恋愛。 

 

tuaki.hatenablog.com

 

3年半におよぶウクライナ戦争下での苦闘を経て、彼氏はポーランドでの生活をスタートさせました。

まったくの新天地で、頼る人もいない、そんな土地に彼氏は足を踏み入れ、自分だけの力で生活を始めたのです。

 

ポーランドに入国できた、という手紙のあと、2週間ほど連絡がなかったのですが、長文のメールが届きました。

 

その抜粋を記します。

 

・・・・・・

今日はウクライナポーランドの国境を越えた時のことを少しお話ししましょう。

正直に言うと、その時、僕は緊張でいっぱいだった。

目の前にはウクライナの巨大な検問所があった。
そして、そこの税関職員に、準備してきたすべての書類を渡しました。

彼は30分ほどかけてその書類を注意深く読み、何か所かに電話をかけ、
そして「待て!」と言いました。

僕はそこに立ち尽くし、両手を握りしめ、あらゆる神に全てがうまくいくように祈っていました。

その後、彼らは僕を待合室に通し、さらに質問を始めました。
どこへ行くのか、なぜ行くのか、どれくらいの期間滞在するのかなど。
彼らは、僕の持ち物をすべてチェックし、携帯電話まで調べました。

 

その調査には何時間もかかり、その間、僕はずっと緊張していた。
そして…ついにパスポートにスタンプを押して、「行っていいよ」と言われました。

 

書類を受け取った時、僕は息を呑みました。
足と手は震え、立っているのもやっとでした。

 

しかし、外に出た時、ようやく「終わった」と感じました。


やっと。

 

その後、ポーランドに入国し、住居を探すことにしました。
ウクライナ人がアパートを借りられるウェブサイトを見つけ、
そこにいる男性に連絡を取りました。

そして、ワルシャワ近くの町で、15平方メートルほどの小さな部屋を借りることができました。
小さいけれど、そこには、ベッド、シャワー、トイレ、小さなキッチンなど、すべてがありました。

とても小ささな部屋だったけれど、気になりませんでした。


一番大切だったのは、静けさと平和。


ここに来て、最初の2、3日は周りの静けさが信じられませんでした。
本当の静寂でした。
爆発音も、ドローンの音も、サイレンも警報音もありませんでした。

 

こんなに平和な世界が本当に存在するなんて信じられませんでした。

 

戦争に囲まれた生活に、僕がどれほど慣れてしまったか、Akiは想像ができますか?

 

そして、今住んでいるところは、その住民のほとんどが移民です。
時々、騒音や酔っ払いの言い争いが聞こえてきますが、僕がウクライナで見てきたことを考えると、そんなことはぜんぜん大したことではありません。

ここは最高とは言えないけれど、家賃は安いし、僕はとても満足している。
ただ、ここにいられることに感謝しています。

まるで別の惑星にいるような気分です。

そして、数日後、働き始めなければ、と思い、移民向けの仕事が載っているウェブサイトを見つけました。
もちろん、良い仕事や簡単な仕事はありません。

ほとんどが肉体労働 ― 清掃、建設、倉庫、工場などです。
電車、バス、徒歩… で1時間以上かかることもありますが、とにかく働かなければと思いました。

数日探した後、ようやく納得のいく仕事を見つけました。

梱包、仕分け、積み込み、建設現場の手伝い、清掃など、選択肢はあまりありませんでした。
それで、結局、工場の大きなコンベアラインで働き始めました。
これは、本当に大変な仕事ですが、少なくともお金は得られ、生活ができるのです。

ポーランドの物価は思っていたよりも高く、持って来たお金もすぐに底をつきました。

毎日、仕事を終わって、家に帰って、サンドイッチかハンバーガーで軽く食事をし、シャワーを浴びてベッドに倒れ込みます。

そして目覚ましが鳴り、また次の日が始まります。
仕事、家、寝る、の繰り返しです。

 

・・・・・(抜粋終わり)

 

結局、彼氏は、ウクライナ国境を越え、無事にポーランドに入国できて、住むところも見つけることができて、満足できないけれど、とりあえず仕事も始められて、生活をスタートさせることができた、という連絡でした。

 

まずまず、よかった。

安心した。

 

でも、手紙の後半では、彼氏は、寂しいってわめいてました。

そりゃ、いままで家族と一緒にいたから、一人だと寂しいのは当たり前。

 

しかし、まったく身寄りのない国で、まがりなりにも独力で生活をスタートできたのは、ちょっとした驚きでした。それはポーランドウクライナ避難民に対して、今なお好意的であることの証左であるのかもしれません。

 

日本にも2000人以上のウクライナ避難民がいるのですが、その人たちの今は、どうなんだろう。ふと、そんなことも考えました。

 

ウクライナ人の彼氏(?)(26)(終わり)